大阪地方裁判所 昭和41年(ワ)6359号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕本件不動産について、昭和四〇年二月三日原告主張のような所有権移転登記がなされ、昭和四一年四月二二日原告主張のような、被告の申立にかかる強制競売の申立記入の登記がなされていることは当事者間に争がない。
<証拠>によると、原告は、昭和三九年六月二〇日現在東洋鉄芯株式会社に対し珪素鋼板の売掛代金等債権総計約七、〇〇〇万円を有していたところ、同会社の取締役であつた森下俊一との間に、森下は原告に対し右債権のうち一五〇万円の弁済に代えて森下所有の本件不動産を譲渡・給付すべき旨の契約を締結した。その際本件不動産の登記済証が森下の手中になかつたので、原告は昭和四〇年二月二一日前示代物弁済を登記原因とする、主文第一項掲記の所有権移転登記を経由したことが認められる。
<証拠>によると、被告は森下俊一に対する債務名義にもとづいて本件不動産につき大阪地方裁判所に強制競売の申立をし、昭和四一年四月二一日同競売開始決定がなされ、翌二二日強制競売申立の記入登記がなされたことが認められる(当該登記がなされたことは当事者間に争がない。)。
他方、原告の森下俊一に対する前示仮登記の本登記手続を求める請求についての訴訟(当庁昭和四一年(ワ)第六三五九号)において、森下が被告として該請求を認諾したことは当裁判所に顕著である。
してみると、一方において前示仮登記の本登記(原告に対する所有権移転登記)手続がなされることはもはや必至というべきであり、他方において前示仮登記の登記原因たる代物弁済契約が有効に存在することは前示認定のとおりである。したがつて右仮登記後の前示強制競売申立記入登記のなされた当該債権者である被告は、いわゆる登記上利害の関係を有する第三者に当るものであつて、被告は右本登記がなされることを、いいかえるとその本登記記入の際登記官によつて前示強制競売申立記入登記が職権抹消されることを承諾すべき義務がある。すると被告は右承諾義務の履行を怠つており、もつぱら自己の義務懈怠のため、原告が仮登記の本登記をすることができないのに乗じて、現在森下所有名義の本件不動産につき強制競売の申立を維持しているものというべきである。なるほど原告は現在所有権移転仮登記をしているにすぎず、その所有権取得をもつて強制執行債権者たる被告に対抗することができないものではあるけれども、他方、被告は前示のようにもつぱら自己の前示承諾義務を懈怠していることによつて強制競売申立を維持しているものであり、強制執行請求権を濫用しているものであるから、このような場合においては、いわば将来の対抗力ある所有権、すなわち将来の「引渡ヲ妨グル権利」を有する原告につき民訴法五四九条を類推適用し、本件強制執行を違法なものとして排除するのを相当と解すべきである。(もしそうでないとすると、競落人がその所有権移転登記をした後において、原告が仮登記の本登記をすることを承諾する義務を有することとなり、競落人は不測の損害を被るであろう。)
そうすると、原告の本訴請求はいずれも理由があるから、これを認容するべく、訴訟費用の負担、強制執行停止決定認可・同仮執行宣言について、民訴法八九条、五四九条五四八条を適用して主文のとおり判決する。(山内敏彦 藤井俊彦 井土正明)